1.師伝、直伝なくしてみだりに型を稽古しないこと。
2.すべての門人は、型や稽古について自分より下の者に指導をしてはならない。特に初心者に対 しては絶対にこれを禁ず。
3.振武舘門人以外の者と振武舘の武術の稽古をしてはならない。
4.師の許可を得て公の場において模範演武をなす以外は、みだりに人前で技を見せてはならない。
5.他流儀、他武道の批評、批判をしないこと。
6.流儀の教え、考え方を社会に反映し、長く世相に準ずること。
7.年齢、性別、修行目的等に個々の差のあることを弁えること。
8.我意、遺恨を含んだ稽古を固く禁ずること。
9.相弟子和睦し、忠信義ををもって接すること。
10.型稽古は数を重ねると共に、朝夕鍛錬のこと。
これら各条項は古い時代のものを基としておりますが、現代風に改変してあります。
一般的には先の者が後の人々を導くということに関して、何ら問題はないものとされておりますが、こと振武舘においては、たんなる先輩門人が後輩を「指導する」ということは絶対的な禁忌事項としております。人それぞれ個性というものがあり、それは術の世界における癖でしかありません。型の世界では無色無臭、そこには人ならずただ型が存在するのみです。理論的な動きを正しく動くことができればそこには無個性な身体的動きが存在するのみです。個性を持った人間が型を打ったとき、そこに独自の動きが反映された色やにおいがあってはなりません。ただ理論的な動きが存在するだけでなければなりません。だれが型を演武しても演武している人の個性が感じられるようなものでは真の技を表現しているとは言えません。見えざる動きを教えるものが型ですから、それを吸収した者の動きは、やはり見えざる動きを基本としていなければなりません。それは修行中途の者たちには不可能なことゆえ、第2項の条文がきつく弟子たちを戒めているものです。初心者が見てわかりやすい動きというものは、指導した者それぞれの持つ動きの癖でしかありません。直伝を阻害するものは極力排除しなければなりません。ほんとうの型を伝え、残したいと願っております。